2体問題
質点・質点系・剛体の力学において複数の質点(剛体の場合衝突しないことを考え重心にある同質量の質点に置き換える)が相互作用しながら運動する系のことを多体系といい,全質点の運動を解く問題を多体問題という.特にn個の質点においてはn体系,n体問題という.1体問題はただの質点の運動である.外力のない内力が万有引力の1, 2体問題は厳密に解析的に解けることが知られているが,3体以上の多体問題は積分法によって一般に解くことができないことが数学的に証明されている.よって現代物理学では摂動論という近似理論で解いたり計算機を使って数値解析によって解くのが普通である.量子論においても同様で厳密に解けるのは電子と陽子からなる水素原子のような系のみであり様々な近似法が編み出された.
重心・相対運動方程式
外力が働く2体系の運動方程式は
であり,内力を
とすると作用反作用の法則より
となる.重心位置,相対位置を
とすると
となり,さらに全質量,換算質量を
とすると
となる.これらはそれぞれ重心運動方程式,相対運動方程式という.もし外力がなく内力が中心力(相対位置のベクトル方向で大きさは相対距離の関数値であるような力)であるとき
とそれぞれ1体問題に帰着する.
第一積分
第一積分(保存量)を調べる.重心運動方程式を時間積分すると
が得られ
より
が得られる.それぞれ重心位置の初期速度と初期値であり重心積分という.相対運動方程式をで線積分すると
ここで後藤憲一力学演習§6〔1〕より中心力はポテンシャルをもつため積分路によらず上端下端をそれぞれとし,それぞれの時刻の相対位置をとすると
が得られる.
はを基準とするポテンシャルとみることができ相対座標と換算質量からなる力学的エネルギーの保存則が成り立っていることがわかる.また両辺を相対位置と外積をとって
より
これは面積速度一定の法則と等価で,また2質点は同一平面上を運動することを意味する.まとめると
のこれら10の量が保存される.少なくとも万有引力のような逆二乗の中心力を仮定するとさらに2つの独立な第一積分が得られる.